秋田郷土料理と銘酒蔵道中 後半

みちのくの小京都、角館の味

江戸時代の武家屋敷群が今も残る仙北市角館町。
この町には藩政期の昔から続く伝統の食文化が連綿と今に受け継がれている。
その一角に三百年の昔から地主・商家として角館と歩んできた安藤家がある。

 

「がっこ」の花が咲く懐石料理 食堂いなほ

食堂いなほ

 

 

角館町の散策で昼食といえば、田町上丁にある食堂いなほの『がっこ懐石』だ。
秋田で「がっこ」は漬物のこと。
9カ所に仕切られた松花堂弁当に、えご草、カボチャの和え物、長芋
土佐酢仕立て、いぶりがっこ天麩羅と甘露煮、納豆和え、ジャガイモシソ酢づけ、
おからと野菜の白玉蒸し、切り干し大根甘酢がっこが美しく並ぶ。

 

他にはない味噌、醤油の美味しさ 安藤醸造

東北最古の煉瓦蔵や町家造りは一見に値するが、
160年の歴史を重ねた安藤家の醸造業も見逃せない。
「本当の美味しい」を求めた無添加、天然醸造の味噌、
醤油は「極選」をテーマに材料が吟味された逸品だ。

 

盆地特有の大きな寒暖の差と奥羽山脈からの清冽な伏流水に恵まれた環境の中で生産される商品は、旅の土産に持ち帰りたい。
水の代わりに醤油で仕込む「さしこみ」手法で十年以上紫紺だ生搾りイ号醤油1365円(360ml)

 

ia_角館_安藤醸造3

店内には珍しい錦絵雛なども展示されている。

安藤醸造

 

 

水と歴史の仙北平野

仙北平野とは、北の玉川、西の雄物川、南野出川に三方を囲まれた、
秋田県最大の穀物地帯のことをいう。
奥羽山脈から流れ出た清らかな水と、豊穣な大地から生まれた良質な米が、
仙北平野を酒造りに適した地にしている。

 

北浦地方ただひとつの造り酒屋 鈴木酒造

鈴木酒造の酒名『秀よし』の由来は寛永年間に、 従来の御用酒「清正」に優るものと藩主佐竹候より激賞を受け
豊臣秀吉と秀でてよしの2つをかけ命名された。
創業は元禄年間で酒造り一筋300年、
藩政時代には杜氏の養成学校とされた歴史をもつだけに、
伝承の芳醇な銘酒が味わえる。
先祖伝来の美術品を見学できる蔵もある。

厳寒には誇らしげな「秀よし」の暖簾

鈴木酒造

 

 

蔵付き酵母と極上の米、水が育てた横手と湯沢の美酒と発酵料理

昨今、秋田の清酒は首都圏の一流飲食店で争って置かれるほど評価が高まっている。
なかでも県南部に位置する横手市、湯沢市には個性的な銘酒を生み出す酒蔵が見受けられる。

 

半径五キロの純米酒づくり 浅舞酒造

1917(大正6)年創業の浅舞酒造は今年急逝した故・柿崎秀衛社長の意志を受け継ぎ
「半径五キロ の酒づくり」を標榜。
蔵から5km圏内の米で純米酒だけを仕込んでいる。
JA秋田ふるさと・平鹿町酒米研究会の農家だけが生産するその米で千石を醸している。
そして、この蔵だけの手作りの酒「天の戸」が生まれてくる。

 

自慢の美稲と醇辛、後ろは伏流水の仕込み水

 

杉玉が見える浅舞酒造

 

試飲には森谷さん手製のつまみが用意される

浅舞酒造

 

風土と一体になった秋田の銘酒 日の丸醸造

日の丸醸造01

横手市にある日の丸醸造蔵。
酒母(酛=もと)づくりはその後に続く日本酒醸造過程の醪(もろみ)づくりに至る基本で、 これを上手くつくることで酒造りの良し悪しが決まる。

 

元禄2年創業の日の丸醸造は「温故創新」を標榜。
昔ながらの製法を大切に守りながら、品質第一とチャレンジ精神をモットーに、
ひたすら『旨い』といわれる日本酒づくりを追い求めている。
米は地元産の酒づくり好適米をベースに全量自家精米し
手抜きのない酒造りから生まれるのが同社の銘酒『まんさくの花』だ。

 

入魂の銘酒『まんさくの花』

 

発酵が終わった醪(もろみ)を清酒と粕に分離する自動搾り機

 

「一滴入魂」の文字が心意気を示す搾り用の槽(ふね)

日の丸醸造

 

昔ながらの寒造り一筋 木村酒造

創業1615(元和元)年。
雪深い湯沢市で昔ながらの寒造り一筋の酒造りを続ける酒蔵が木村酒造だ。
銘柄の『福小町』は、明治14年の明治天皇巡幸で同蔵が侍従長の宿となった際に
御酒を供して賞賛され『福娘』の銘をいただき、後に『福小町』と改めて現在に至っている。
酒造りの要には、明治末期から県内山内村出身の杜氏が選ばれ酒造りに励む。

100年ほど前に米を蒸したカマド跡で、蒸し米を左手の蔵 (240年前の建築)に運び入れ酒の仕込みを行った。

 

現在の仕込み蔵

 

銘酒 『福小町』

 

木村酒造前で案内してくれた佐藤時習さん

木村酒造

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