秋田郷土料理と銘酒蔵道中 前半
日本海に面した秋田県は県内の大半が特別豪雪地帯で、冬の日照時間も全国で最短だ。
そんな厳しい自然のなかで、受け継がれてきた独特の食文化が発酵食である。
『麹』を使った発酵食は日本酒、味噌、醤油、酢、漬物など多岐にわたる。
昔ながらの素晴らしい食文化を味わおう!!
男鹿の海の幸
「なまはげ」の行事で知られる男鹿半島は、
日本海に突き出た半島で四季折々の魚介類、山菜の郷土料理と、
海山の幸を同時に楽しめる。
なかでもハタハタ漁が名高い。
日本海の幸を堪能
亀寿司食堂
男鹿半島北浦漁港にある亀寿司食堂での昼食は、刺し身を脇に置き、中央にデンと納まるのが大きなソイ(キツネメバル)の焼き魚だ。
焼いても煮てもよしの絶品。
右手前が、タラを酒粕と、しょっつるで味付けした潮汁。
左隣が北浦港で 11 〜 12月に揚がるハタハタを使った飯鮓(いずし)とトロトロ若布にイカの塩辛など。定食は2100円~が基本だ。
名産ハタハタの水揚げ量県内随一の北浦漁港。
絶品のソイは300 ~ 400gと型も大きい。
昭和43年創業の同店は民宿も経営。
駐車スペースも20台と余裕がある。
天然の旨み魚醤を極める
諸井醸造
男鹿市船川漁港にある諸井醸造は特産の魚醤『しょっつる』の醸造元。
厳寒の12月に水揚げした新鮮なハタハタだけを仕込み樽に入れ、
天日塩をまぶして十年もの長期間漬け込み、
自然発酵で魚体の原型が分解して出来た味噌のような諸味原液をこし布でろ過し、
香り高い琥珀色のしょっつる原液を生産。
混ぜ物なしの自然調味料だ。
新しい漬け込み樽を上から覗いた様子と社味噌状の熟成原液。
限定500本生産しょっつる十年熟仙
秋田郷土料理と銘酒蔵道中〜八郎湖と日本海を望む潟上市〜
八郎潟と日本海を望む湖南地区に広がる潟上は水辺に隣接し、風光明媚。
八郎潟調整池に近い地区に煉瓦の蔵、小玉醸造はある。
明治中期に建てられた醤油蔵には一升瓶4000本分のもろみが醸成を待つ巨大な杉樽が並ぶ。
明治の煉瓦蔵が育む味噌・醤油・酒
小玉醸造
明治12年ヤマキウ醤油の製造から始まった同社は、清酒太平山でも知られているが、
醤油、味噌、酒の三品を同じ蔵で生産する全国でも稀な醸造所だ。
味噌、醤油と酒を発酵させる酵母は別物だけに、製造場所は別棟。
なかでも醤油を天然醸造する秋田杉の樽は百年以上使われ続け、
今では材料も職人もおらず二度と作れない貴重品だ。
明治中期に建設されたレンガ蔵は昭和58年の日本海中部地震でもびくともしなかった頑丈さ。
大正2年から醸造を始めた日本酒は『太平山』
能代市街に隠れた美酒処
秋田県北西部、日本海と世界自然遺産「白神山地」、
出羽丘陵の緑豊かな森林地帯に囲まれた能代市に、秋田銘酒の伝道師がいる。
極上銘酒の伝道師
天洋酒店
能代市の中心街住吉町に日本酒しか扱わない酒屋さんがある。
ご主人の浅野貞博さんは平成9年から店の商品を日本酒のみの品揃えに統一。
しかも秋田県下の醸造元から、蔵人の気持ちと浅野さんの方向性が響き合う蔵のみの酒を置くという徹底ぶりで、今のところ10カ所の酒蔵のみがその恩恵に浴している。左利きならぜひ寄ってみたい。
蔵元自慢の銘酒が林立。
浅野さんは酒蔵案内も買って出てくれる。
古民家のような木の温もりがある落ち着いた雰囲気の店内にはカウンターのほか小上がりの間もある。
別名『べらぼう凧』とも言われる能代凧が看板。
当然天洋酒店推薦のオリジナル銘酒も用意されている。
ネギ椎茸焼き
比内地鶏の焼鳥の組み合わせでもう一杯
地酒と郷土料理に舌つづみ
酒どこ・べらぼう
夜の帳が降りるころ、そぞろ歩きしたい能代の柳町に、
お酒にこだわった居酒屋『酒どこ・べらぼう』はある。
天洋酒店の浅野さんも太鼓判を押す同店では当然数十種類に及ぶ旬の地酒を楽しめる。
郷土料理も負けてはいない。
比内地鶏のだまこ鍋(右)、焼鳥、じゅんさい鍋、くじらかやぎなど
郷土色満点の味が楽しめる隠れた名店だ。
昔の風情と新しい酒を生む五城目町
五城目町では、秋田県内で最も古い1495(明応4)年から500年以上にわたる歴史をもつ 伝統の路上朝市の「五城目町市」が開かれている。
また、この朝市通りに面して日本酒醸造元の福禄寿酒造もある。
500年の歴史と伝統が息づく
五城目朝市
地元庶民の食を支えるこの路上朝市では、4~6月には山菜で賑わい、 7~8月には朝取りの新鮮野菜が、9月からは豊富なキノコ類や地場産品、 珍しい山野の果物なども並ぶ。
また冬場には漬物や保存野菜の発酵食品など、四季折々に様々な食材が手頃な値段で入手できる。
市が立つのは1の位が2、 5、7、0の日が基本だ。
朝市通りには早朝から地元の農家や漁師などが店を並べる。
地元ならではの発酵を生かした色とりどりの漬物
採れ立ての山菜が目に鮮やか
生きた鮒(フナ)も郷土料理に欠かせない
若い杜氏たちの熱気が生む美酒
福禄寿酒造
創業1688年、中硬水に恵まれ元禄時代より320年以上続く酒造りの歴史をもつのが福禄寿酒造。
とはいえ県内一若年で杜氏試験に合格した杜氏と16代目を受け継ぐ 渡邉康衛現社長の若い力で生み出された銘酒『一白水成』の評価は近ごろ鰻登り。
4年前から地元の農家と酒米造り研究会を立ち上げるなど、旨い酒造りへの意気込みをみせる。
全国登録有形文化財指定という土蔵造りの酒蔵で眠りにつく清酒たち
外気を遮断する麹室
朝市の客が酒粕目当てに訪れる福禄寿酒造
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