幻の特装車『キャラバン・ホリデーキャンパー』が出た!
国産キャンピングカー第一号が誕生したのは’58年のこと。
画家の故・桐野さんが世界を旅するために制作したのが始まりである。
車両はマツダのオート三輪。
その改造を手がけたのが、ここに紹介するキャラバンも作った浅草武シートなのだ。
今回、国産初のキャンピングカーを作ったE20キャラバンのキャンピングカーをご紹介したい。
細部まできちんと製作された豪華キャンパー
フロントのスペアタイヤ(本来はビニールレザーのカバー付き)とリヤの特大バンパーが特徴的だが、これらは使用者の好みに応じて、いかようにも製作できたようだ。
ルーフボックス仕様車もある。
ただ、浅草武シート(武キャンパー)が好んで用いていたキャラクターラインは、
共通の意匠である。
ベースは ’78年型で、型式は VRE20改となる。
乗車定員、宿泊定員ともに5名。
H20ガソリンエンジン搭載車ベースもラインアップされていた。
当時の参考価格は約283万円。日産純正のキャンピングカーの最終型が205万円だったことを考えると、かなり高価なことがわかる。現オーナーはバラクーダの協力でナンバーを取得。
バンパーとフロントカウルにステーを渡し、スペアタイヤをマウントする。
ポップアップルーフは、前部ステンレス製ラッチ2カ所を外すことによってフリーとなり、内部から骨組みを押すことで開く。ナイロン製のシートが形成する個室空間が天井に生まれるわけだ。
武キャンパーのデカールがルーフ後端に残っている。
青い地球儀のロゴマ ークが色あせてしまっているが、よくぞ残っていたものだ。
元オーナーはボディカバーを2重にかぶせていたという。
インパネまわりは基本的にノーマル。
フォグライトのトグルスイッチがレイアウトされるほか、ルームランプの接点から
電源を分配したマップランプが備わる。
マーシャルのフォグライト(810)は、おそらく車両改造時に追加された装備。
100V電源を外部から導くため、車両左側にはソケットが備わる。
エンケイバハは、当時の武キャンパーの多くに装備されていたイクイップメント。
アルミの縞板を使用したキャリヤとしても使用できる頑丈なリヤバンパー。
特装車を手がける浅草武シートならではの装備と言えよう。
積載ヒモ等がかけられるよう、フックボ ルトがふたつ備わる。
ステーはがっちりと車体に溶接固定。
キャラバン/ホーミーシリーズ へ’78年に追加ラインナップされたのがディーゼル仕様。
エンジンは SD22型(2164 cc)で65 ps / 4000 rpmを発揮。
昭和52年排ガス規制適合車だ。
現車は長期保管だったが、バッテリーをつなぐとすぐ息を吹き返した。
アクセサリー用の電源を安定して供給するため、通常のバッテリーに加え、サブバッテリーも装備。
コンロはコールマンの埋め込み式レンジを運転席後ろに装備。
燃料はLPガスで車室外にガス供給用のソケットを装備する。
スライドドアの直近にシンクを設置する。給水システムは負圧を利用した足踏みポンプ式。
それらはキャンピングカー用にも給水システムを供給するイギリスのホエール製で統一されている。
おそらく100V電源を外部から共有することによって使用可能になるコンセントをスライドドア部に装備。30Aのブレーカーも備わる。車室の運転席より後ろには、このビニールのクロスが隙間なく張られ、防音だけでなく保温効果の高さもうかがえる。
シート三態
武キャンパーの売りが、中央座席の「3転換システム」を採用していたこと。
中央座席を前向きにした状態。
座面と背面のクッションを入れ替えるように向きを変えれば、後席と対面シートへ簡単に変更。
合板の骨にかなりの厚みのクッションを用いた住居用マットレスのようなシートである。
シートをそのまま倒せば、フルフラットなベッドルームへ変身。
ここへ 3人寝ることができ、さらに上面のルーフスペースにふたりが就寝することができた。
格子模様のファブリックは、今日の目で見るとレトロモダンである。
窓にも同カラーのカーテンが備 わる。天井には大型の防滴ランプも付く。
シートカラーに合わせた飾りボタン付きの内装は、防音効果もかなり高い。
車室後方には大型の物入れをレイアウト。
武キャンパーの車室レイアウトは一貫しており、ほかのモデルでも各物入れをはじめとした配置は同一となっている。大型のピクニップテーブルチェアだけでなく、長尺物も収納可能である。
また、特筆すべきは各引き出しや扉がまるで桐たんすのように?
しっかりと節度感を伴って開閉することだ。
走行中も引き出しが開くなんてこともない・・・感動だ。
ポップアップルーフ
作動がしっかりとしたステンレスのバックルは指で簡単に解除できる。
ルーフ上はシンプルな空間が広がり、照明がひとつ備わる。
ルーフの内張にもスポンジクッション入りの内装材が張られている。
換気用の窓部には、マジックテープ式の防虫網を備える。
浅草武シートは幌の製作でも有名だったから、ただのシートのように思えるが ノウハウがあるのだろう。
30年以上も前に製作されたこのシートが無傷なのだから。
タンクは未確認ながら容量をアップしている可能性がある。
SD22エンジンのディーゼルサウンドを響かせ、車体をぐいぐいと引っ張っていく。
意外にも遅くはないし、防音がきちんと行われているためか、車室内は非常に静かである。
クー ラーでも付ければ、現在もキャンパーとして過不足なく活用できるだろう。
雑誌「オールドタイマー」に、武キャンパーの歴史が掲載されているぞ!要チェック!
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