ポルシェとVWの混血ミッドスポーツ PORSCHE 914 2.0(1976年式)
軽い車体と程よいパワーバランスの妙を愉しむポルシェとVWの混血ミッドスポーツ
PORSCHE 914 2.0(1976年式)
914は1970年に販売を開始。当初はVW製1.7ℓフラット4を搭載したモデルと、ポルシェ911Tと同じ2.0ℓフラット6を載せた914/6の2本立てでスタートしている。
72年にはVW製1.8ℓフラット4を2.0ℓにスープアップしたエンジンが搭載され、前出の914/6の役割を兼ねる形となる。また外観面では、75年にモデル車と同じように前後バンパーがラバーコートされた。紹介車両は76年式の最終モデル。古くからダイアンに出入りするユーザーが大切に所有してきた極上の1台である。
当時のスポーツカーがこぞって採用したポップアップヘッドランプも健在。
丸型のランプと楕円形のクリアランスレンズの組み合わせがクラシカルな雰囲気を盛り上げる。
当時としては長めのホイールベースにより、オーバーハングを短く設定。
非常に低いウエストラインと合わせ独特のプロポーションを見せる。
回転計を中心としたメーターレイアウトは911系と同様。
低く設定したリクライニングレスのシートと併せスポーツカーらしいポジションを構成する。
また914ではリヤにコイルスプリングを採用。
エンジンをはじめ他車パーツを多数流用しながらも、走りに直結するパートにはポルシェAGならではのこだわりが注がれた。
なお脱着式トップはリヤトランクにスッキリ収まる。
サビやすいと言われた914だが、現車は弱点のひとつ、フロントトランクの床面も極めて良好だ。
ご存じのようにポルシェ914は、ボディはポルシェAGが、エンジンの供給はフォルクスワーゲンが主に担当した2社合作のスポーツカーだ。セールス的にはプライスも含めエントリー層から人気を集めた一方、熱心な自動車ファンには911シリーズに対し格下の存在として見られた感がある。
だが昨今のクラシックカーブームも手伝い、このクルマが再度注目を集めている。ここではポルシェ914とはどんなクルマだったのかを再考したい。
「70年代の中頃、当時の私はS30Zの3ℓに乗っていました。
ハコスカGT -Rの友人とゼロヨンをしに某所に行ったらたまたま914に出くわした。その頃は911こそ本格ポルシェ、914はヤワなポルシェ、と勘ぐっていました。
案の定スタートから数十mはGT -Rが優勢。しかし中盤からグングン迫いついてきて最後には抜き去られた。
ショックというより、さすがポルシェ!と、これまで914に抱いていた印象が吹き飛びました」とダイアンの代表、熊谷 徹さんは、914との初対面の話を聞かせてくれた。
だが時の流れは残酷だ。くだんのGT -Rも含め、優れた一面を持ったクルマとはいえ技術の進歩には太刀打ちできない。
現行車に比べれば性能面は絶対的に劣るし薄いクッションのシートや、ひとクセある各種操作系など快適性や扱いもお世辞にもいいとは言えない。しかし、その不便さも美点と思わせるのがヴィンテージカーだ。
その視点から改めて914を見ると実に魅力的だ。低い車体はタイトなドライビングポジションを作り出し、クルマとドライバーの一体感を高め非常に心地いい。そして1tを切る軽い車体は、クルマを自身のコントロール下に置きやすい。
絶対的なコーナリングスピードや最高速度云々ではなく、限界一歩手前のバランス感覚の中で走らせるのがとても楽しいのだ。
タルガトップを外し、オープンエアをゆったりと心ゆくまで味わうのもいいだろう。週末、いつもより少しだけ早く起き、緑に包まれたワインディングを流す。中腹のパーキングでコーヒーブレイクなんてのもいい。
そんな付き合い方もポルシェ914によく似合う。
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