塩湖のサビとも戦う防錆術
塩湖のサビとも戦う防錆術
速度記録者の大敵はサビだった!
ボンネビル・ソルトフラッツの防錆術
ボンネビル・ソルトフラッツに佇むマツダ・ミアータの速度記録車。
レコードブレーカーは塩湖のサビとも戦う宿命にあるのだ。
2018年、ロス在住のサム岡本さんがマツダMX-5ミアータに13Bを搭載したマシンでソルトフラッツのボンネビル・スピードウィークに挑戦。写真左はゲストドライバーとして参加した宮城 光さん。宮城さんはホンダストリームライナーによるクラス最高記録を持つ。右は防錆塗料「サビキラーPRO」でバックアップしたBAN-ZIの宮原万治社長。
記録を支えた意外なモノ
砂漠のような地の果てに佇むマツダMX–5ミアータ(マツダ・ロードスター北米仕様)。そして満足げな笑みを浮かべる男ふたり……。ここはソルトレイク・フラッツ。2018年、ボンネビル・スピードウィークでのひとコマだ。
この1991年式マツダ・ミアータのオーナーは米国ロスアンジェルス在住のSumito Sam Okamoto(以下、サム岡本さん)。2018年、自ら率いるチーム「F-5スピリッツチーム」でボンネビル・スピードウイークに参加し、見事に280㎞/hを突破した。3度目の挑戦だった。
70年以上の歴史を誇るこのイベントは二輪以上の車両であればなんでもエントリーできる。バイクあり、ストリームライナーあり、大型トラックあり。メーカーのワークスチームもいたりするが、多くはプライベーターだ。
LAでエンターティメント・プロデューサーとして活躍するサム岡本さんもプライベーターである。自宅のガレージでコツコツと13Bエンジンを積むミアータを作り上げ、’14年から参戦。その道のりは決して平坦ではなかったが、多くの仲間の協力を得て、ついに280㎞/hの壁を打ち破った。
そしてその記録を、とあるケミカルも支えていた。BAN–ZIの「サビキラーPRO」である。
長く使うマシンを守るため
サビキラーPROは、水性のサビ転換防錆塗料。多少のサビが浮いているところでも直接塗ることができ、赤サビを黒サビに転換して腐食を止める。水性なのでハケ塗りが容易であり、必要に応じて水で粘性を調節できる。そのサビキラーPROが、いったいスピードトライアルとどう関係があるのだろうか。いや、大いにあるのだ。
最高速記録の世界基準ともなっているボンネビル・スピードウィーク。しかしそのコースであるソルトフラッツはかなり特異だ。その名のとおり塩湖の広大な塩原。塩の上を走るのである。踏み固められているとはいえ、走りだせばあっという間にボディもシャシーも塩まみれだ。
さきに触れたように、ボンネビル・スピードウィークを目指す者は大半がプライベーター。資金もスタッフも限られる彼らは、同じマシンを何年も熟成しながら使い込んでいく。だから防錆処理はエンジンやシャシーのチューニングに劣らぬ要素なのである。
サム岡本さんは今回、サビが浮いてきたミアータにしっかりとサビキラーPROを施工した。防錆塗料がスピード記録の最前線で役立っているとは意外な話だが、1台のクルマ長く大切に持ち続けたいという思いは、レストアラーと同じである。
F-5スピリッツレーシングチーム代表・サム岡本さんの1991年式 MX-5ミアータよる速度記録チャレンジはこれで3回となる。ロス近郊の自宅で製作したマシンを自家用車のトレーラーヒッチでボンネビルまで引いて来た。ピット代わりの作業スペースにはシートを敷く。それでも塩湖の塩が吹き込んで来る。
2017年の挑戦はメカ不在のなか記録は137マイル(約220㎞/h)にとどまった。
今回は空力面での見直しもしたうえ、サビキラーPROでバッチリ防錆対策も。
サビキラーPROで徹底防錆
プライベーターの速度記録車は何年も同じマシンを改良して使うことが多い。
そのためソルトフラッツの塩害によるサビが大敵となるのだ。MX-5ミアータの製作場面。13Bエンジンを積むエンジンベイの要所とラジエターサポートパネルにしっかりと錆転換防錆塗料「サビキラーPRO」が塗られた。高速走行でもろに「塩」が吹き込み、溜まってしまう部分である。
防錆処理されたエンジンベイに収まる13Bエンジン。ウエーバーのφ51ダウンドラフトキャブが勇ましい。すでに塩をまぶしたようになっている。
今回、ミアータを塩害から守った「サビキラーPRO」。「取るより塗る!これがサビの新常識」直接塗ってしつこいサビを根こそぎ封じ込める、水性サビ転換塗料である。
サスペンションのアーム類などにもサビキラーPROを塗布する。ある程度落としておけばサビの上からも塗ることができる。
ミアータを載せるトレーラーにもサビキラーPROをしっかり塗った。こうやって長持ちさせるのである。
280㎞/h突破!
前回のチャレンジから空力面でも進化した。フロアを整流板で覆い、フロントの“口”は空気抵抗軽減のため小さくされ、オープンキャビンはキャノピー型に。テールには整流のためのダックテールが付く。
その後も“塩の道”への果敢なトライは続き、ついにサム岡本さんが174.756マイル(281.2㎞/h)を突破した。
2本目に走ったゲストドライバーの宮城 光さん。173.4マイル(約279㎞/h)まで記録を伸ばした。
F-5スピリッツレーシングチームの仲間たちと280㎞/h突破のミアータ。手前3人は右からSumito Sam Okamoto、宮城 光、宮原万治の各氏。
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