RE車を生かすシート生地 刻クロス
RE車を生かすシート生地 刻クロス
同じ生地が入手できず、妥協して家具用の生地の中から似たようなものを選んでいた、旧車の"柄モノシート"の張り替え。だが、その時代はすでに終わった。ジャックポットが開発した「刻クロス」が、RE 旧車の救世主となる。
登場とともに、、鮮烈な印象を世の人に与えた初代RX-7。リミテッドのみに設定された塗色「マッハグリーンメタリック」を筆頭に、鮮やかなカラーリングも注目された。内装にも目を向けると、ベージュやレッドなどのチェック柄がシート生地に採用され、RX-7の個性のひとつとなっていた。だが、登場から40年を経た今、この"個性" がアダとなり、オーナーたちを悩ませている。
無論RX-7に限らず、柄モノのシートはそのモデル(グレード)の個性を主張するアイテムだった。しかし、いざ旧車として再生する対象になると、張り替えようとしても「生地が手に入らない」事態が発生したのである。外装やエンジンをどんなに完璧に仕上げても、シートは家具用の似たような柄か、無難な黒にするしかなかった。
……と、それはついこの前までの話。
ジャックポットが3年の期間を経て開発した「刻クロス」が、愛車の傷んだ柄モノシートに悩む、あらゆる旧車マニアを無間地獄から解放する。
刻クロスは、生地を"織る" というこれまでの固定概念を捨て去ることから始まった。過去の例では、オーナーズクラブ単位でシート生地の復刻活動があったようだが、改めて生地を織るとなると、一例では最小ロットで300mにもなるという。当然、個人が1台や2台のために作れる量ではない。
では、なぜ柄が簡単に再現可能となったのか? 実はこれ、ベース生地に柄を「プリント」したものなのである。
近年のクルマでは、プリントのシート表皮を採用したものが珍しくなく、理由は簡単に多くの車種・グレードに対応でき、コストも抑えられるからだろう。つまるところ、新車に使われるポピュラーな技術を旧車に応用したのが、この刻クロスなのだ。技術の進歩が旧車を救うこともあるという好例だろう。
これに加え、ベース生地に保安基準を満たす防炎素材を使用した、「車検に通るシート生地」でもある。だから、旧車に限らずどの年式の車両にも安心して使える。例えば、最新のマツダ車のシートをコスモスポーツのパターンで……といった遊びも可能なわけだ。
なお、依頼者には生地の状態で納め、張り替え作業は依頼者自身で手配するスタイルが基本となる。また、見本の生地(色褪せや破れのないものが最良)さえ用意できれば、あらゆるパターンを容易に再現できるというから、愛車と同じ柄がラインアップされるのをいつかいつかと待つ必要もない。
これを待っていた! という趣味人たちの声が聞こえてきそうだ。
擦り切れて、ボロボロになった純正のシート生地。このまま乗るのは決して気分のいいものではない。
刻クロスが見せる自在な表現力
上に重ねた生地が刻クロスで再現した初代サバンナRX-7(SA22C)のGT 用で、下がサンプル的に製作した“織り”の再現生地(無論300mコース)。見てのとおり、写真ではもはや判別不可能。この質感を生地に写し込む技術に、刻クロス独自のノウハウが隠されている。
SA22C 用の純正パターンはすでにフルラインアップ済み。面白いのが、ビニールレザーの質感も再現できる点。冬は冷たくなく、夏はベトつかないビニールレザー風の生地になる。
後席もこのとおり完璧。刻クロスは、生地の状態で1台分+αのサイズで販売する。参考までに、SA22Cの場合は税抜き4万2790円~で、機種によって使用面積が異なるため価格も変動する。
社外バケットシートを純正パターンの生地で張り替えるという遊びもできる。写真はレカロをSA22CのGT 用カラーの刻クロスで張り替えたもの。プリントだから文字などを入れるのも容易だ。
ジャックポットでは店舗2階に常時サンプルのシートを展示している。生地サンプルさえあればRE車以外でも製作可能だから、柄モノシートにお困りの趣味人は一度相談することをお勧めする。
JACKPOT
ジャックポット代表のジャッキー奥原さん。独自の視点でRE車と付き合い続けるREエキスパートだ。「こんなモノがあれば」という発想を大事に、様々な品を生み出し続ける。刻クロスの"きざみ"という名称を不思議に思う人もいるかもしれないが、これはチューンドロータリーが奏でる断続的なアイドリング音に由来する。
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