整備経験ゼロから始める、セリカ メンテ生活
整備経験ゼロから始める、セリカ メンテ生活
誰にでも何にでも最初というものがある。
当項は自ら未体験の領域に突っ込み愛車の整備を行う、あるリフトバックオーナーの奮闘を記した体当たり整備記録である。
どういうわけか後ろめたい
自己陶酔的な話で恐縮なのだが、イベントや取材先で「欠かさずオールドタイマー(Oldtimer誌)読んでいます!」と仰っていただけるのはなかなかにうれしいものである。しかし、「旧車を購入して読み始めたら、泥沼にハマってしまいました♪」なんてさわやかな笑顔で言われちゃうと、こらぁどうしたもんかと頭を抱えたくなる。
そもそも小誌は旧車を愛でサビを愛する(もしくは駆逐する)雑誌だ。もっと言えば弊社の雑誌類は「趣味の扉を開く」ことを旨としている。だから読者の方がサビまみれでクルマと戯れるのは願ったり叶ったりだし、旧車趣味人がひとり増えるだけで「小誌の基本方針はやはり間違っていない!」とドヤ顔をしてしまう。
読者が楽しげであるならば小誌スタッフはそれだけで満足なのだ。……それなのに、どうして今回はこんなにも後ろめたいというか、申し訳ない気持ちになるのだろう。「新築ワンルームマンションの流しでヘッドの洗浄をしたんですよ〜」と話すセリカオーナー、堀越 健さんの旧車生活が、小誌の記事をきっかけに本人さえも予想しなかった方向へとぶっ飛んだからだろうか?
旧車って格好いいな
堀越さんが旧車に興味を持ったのは、今から20年近く前のこと。近所に停めてあるハコスカを見て「へぇ、格好いいもんだな」と思ったのがきっかけだった。
それまでクルマに特別な思い入れもなく、クルマをいじることなど考えもしなかった堀越さん。にも関わらず「格好いいな」と思った瞬間、何かのスイッチがカチリと入り、突如として旧車購入欲が高まり始めた。そして電光石火の勢いで、セリカリフトバックを買ってしまったのである。
「その当時のハコスカの値段は70〜90万円でしたが、さすがにそんなに払えない。
なのでより安価で入手しやすかったセリカに決めたんです。車両価格が50万円ほどで、総額は70万円ちょっとだったかな?」
こうして堀越さんの旧車ライフは、怒濤の勢いで開幕したのだ。しかし、対する相手は旧車である。
すでに製造から20年以上が経過していたし、当初からコンディションがあまりよくなかったので、当然のようにトラブルが発生した。ワイパーが動かなくなったり、パワーウインドーが上がらないなど、電気系統の故障が多発したのだ。
普段使いのクルマとしてセリカを購入したので、ワイパーもパワーウインドーも動かなければ困ってしまう。すぐさまクルマ屋さんへ修理に出したが、帰ってきてしばらくするとまた同じような不具合が起こった。
なんでこんなに壊れるんだ……。初っ端から旧車の洗礼を受け、困り果ててしまった堀越さん。しかしそんなとき目に飛び込んできたのが、サビ取り雑誌の異名を持つ某旧車専門誌だった。
誌面には、自身でクルマを整備する様子やノウハウが、至る所に記載されていた。
それを見た瞬間、天啓にも似たひらめきが頭のなかを駆け巡った。
「そうか、セリカが壊れたら自分で直せばいいんだ!」
堀越さんのなかでまたスイッチが、しかもあらぬ方向に入ったのであった。
1975年式セリカリフトバック 1600GT。ふとしたことがきっかけで旧車に興味を持った堀越さんが20年ほど前に購入し、通勤やお子さんの送迎に使用してきた愛車である。
手探りでもとことんいじる
エンジンは自身で組み上げたのだが、完成までには試行錯誤の連続だったという。最終的にHKSピストン、3Tクランク&コンロッドを組み合わせた2ℓ仕様に落ち着いた。
キャブレターはOERのφ45㎜を搭載する。当初はセッティングが出ずに苦労したが、こちらも根気よく調整してようやく安定したという。
インパネまわりは基本的にノーマルだが、モモ製ステアリングとRAZO製シフトノブを装着。オーディオは近代的なものに置き換えている。
インパネには自作のスイッチパネルを装着している。ちなみにエアコンの調整つまみは他車種用を加工して形状を近づけたのだとか。ひとつ本物なのだが、どれかわかるだろうか?
ボンネットとフロントフェンダーはリスタード製のFRP製を装着。ポン付けでは若干チリが合わず、ステーに加工が必要だった。
雨漏りはハッチバック車のリヤゲート周辺でよく起こるトラブル。それに起因すると思われるゲート周辺の腐りは予想以上にひどく、パネルのほとんどを板金で作り直している。
ちなみにフューエルリッドは給油時に燃料キャップをつっかえ棒にするのが正解で、引っ掛ける部分もきちんとあるのだとか。これなら手で押さえておく必要がない。
現在作業中なのは、以前に腐りを修正したルーフ周辺の再塗装。下地の塗装はハケ塗りすることも多く、上塗り塗装はいつも実家前で行うという。
セリカの神々 (ヤエスメディアムック649)
今年誕生50周年となる初代トヨタ・セリカの魅力をまるごと1冊に凝縮。
初代セリカ(ダルマ、リフトバック)に焦点を当てて、旧車としての魅力をわかりやすい内容で紹介。
ヒストリー、レースシーンでの活躍を解説。
登場する車両はレーシングチューン、カスタムマシン、ノーマル車までさまざまなタイプ。
愛車に惚れ込んだオーナーたちもその魅力を熱く語ります。
かつてセリカに憧れた方も、これからぜひ手に入れたいという旧車ファンも必見です。
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