町中のマスコット、バブルカーこと、ハインケル・トロージャン200(1963年式)

町を走れば道行く人が振り返り、対向車のドライバーは興味深そうに視線を送る。
トラブルを起こして道路の真ん中で立ち往生しても目くじらを立てて怒る人はわずか。

まるでマスコットのようなクルマだ。
前二輪、後一輪レイアウトのバブルカー、ハインケル・トロージャン200をご紹介したい。
小さなクルマのみが持ちうる、その枠に収まりきらない大きな魅力をのぞいてみよう。

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同車はドイツの航空機メーカーだったハインケル社が戦後に製造した車両を、
イギリスのトロージャン社がライセンス生産したモデルだ。

バブルカーという名称は、丸く膨らんだキャノピー形状のウインドーが泡(バブル)を
連想させたためそう呼ばれるようになったという。
1940年代ごろから姿を見せ始めた超小型自動車の総称。
小排気量のエンジンを搭載し、三輪または四輪のタイヤを有したマイクロカーだ。

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つぶらなヘッドライトや丸く膨らんだリヤスクリーンなど、
どこをとっても愛らしい印象を受ける。
コンパクトな車体ゆえ、狭い道だろうが裏道だろうがお構いなしに入っていける。

この手のクルマはこういったのどかな場所を走っているのが
似合っているように思える。


 

外装

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全長2550mm、全幅1370mm、全高1320mmという寸法は、
360cc軽自動車よりもいくぶん全長が短い。
車両重量も290kgと、クルマとして見れば異様に軽い。
球状のフロントウインドーは、
なるほどバブルカーと呼ばれるだけの形状をしている。


 

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乗降はフロントのハッチを開けて乗り込む。

イセッタと同様の機構だが、トロージャンは
ステアリングシャフトがドアと連動していないのがポイント。


 

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エンジンは空冷4サイクル単気筒で、
排気量はわずか198ccしかない。

それでも一般道のクルマの流れに乗って
巡航できるくらいの能力はあるのだ。


 

内装

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インテリアはもちろん最低限のものしかついていない。

空調は三角窓とデフロスター用のヒーターのみ。


 

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アクセルペダルがユニークな形状をしている。
なんとローラー状になっていて、踏みやすいようになっているのだ。
一部車両にも採用されていたらしいが・・・。


 

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イグニッションはキーを押す方式。

ほとんどのクルマは、
キーを回すかイグニッションスイッチを押すかだから、
この方式はとても新鮮だ。


 

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いつトラブルが起こっても対処できるよう、
車体後部には工具を搭載。

万が一出火したときのため、消化器は必須装備だ。


 

オーナーより一言 〜きっかけ〜

仕事のために訪れたスウェーデンでの取引先の社長から紹介された。
「私の自宅にあるクルマコレクションを見に来ないか・・・」
そのなかで、1台のクルマに釘付けになったのがトロージャン。

社長さんも「君ならば」と譲ってくれたのだが、いざフタを開けてみると
車体はボロボロで、エンジンも固着しているというなかなかにシビれる状態だった。

八方手を尽くしながら、数年かけて直し、どうにか登録までこぎつけたのが今から約30年前のこと。
それ以来、大事に乗り続けているわけだが、猫かわいがりして大事に保管するのではなく、
各地のイベントへ積極的に連れ出しているという。

「このクルマはオモチャみたいな可愛らしさがあります。
普通の旧車とはなにからなにまで違います。」

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